抵抗器の技術動向

開発トレンド

高密度実装

スマートフォンやウェアラブル機器では0402サイズ(0.4mm×0.2mm)の電子部品が数多く使われています。しかしながら、限られたスペースの中でさらなる高機能化を実現しなければならず、 チップサイズについては0201サイズ(0.25mm×0.125mm)など、より一層の小型化が求められています。

 

実装技術としてはフィレットレス実装によって狭隣接実装を実現し、部品のパッドにビアを形成するパッドオンビアにより表層配線を削減することにより、実装密度を向上させています。

 

更に、高密度実装を実現する方法として、半導体・電子部品などを3次元実装したモジュールの開発が進んでいます。これまでの部品内蔵技術をモジュールに適用したもので、スマートフォンのメイン基板へ実装されており、メイン基板のデザインルール緩和によるコスト低減に貢献しています。

 

弊社では高密度実装やモジュールに適した超小型チップ抵抗器RK73B, RK73Hを商品化しています。

電流検出の高精度化

携帯情報機器のパワーマネジメント機能を実現するためには回路に流れる電流を正確に測定する必要があります。回路電流の測定は、一般的には回路に直列に電流検出用抵抗器を挿入し、この両端の電圧を計測することにより、そこに流れる電流を求めることができます。しかしながら、スマートフォンのように待機時とアプリ動作時などの大きな電力を消費する場合とでは、流れる電流に100倍以上も差が有り、どちらの電流も正確に測定できなければならないため、電流検出用抵抗器は高精度で且つ、温度変化の影響を受け難い抵抗温度係数の小さなものが求められています。

 

弊社の厚膜タイプの低抵抗器UR73, UR73V, SR73, WK73S, WU7310mΩ10Ωまでの豊富なバリエーションを持っており、抵抗温度係数±75 x10-6/K に対応した製品も用意しています。

 

また、ノートPCCPU用電源はDC-DCコンバーターが使用されており、CPUの負荷変動に追随できる出力安定性が求められるため、スイッチングスピードが非常に高くなっています。このため、DC-DCコンバーターの制御回路に使用される電子部品の持っている寄生インダクタンス成分が大きく影響を与えるようになります。したがって、電流検出用抵抗器は寄生インダクタンスの低いものが必要となります。

 

弊社の金属板チップ形低抵抗器TLRシリーズは寄生インダクタンスが非常に小さく、高精度の電流検出が可能です。

信頼性

カーエレクトロニクス機器は厳しい環境にさらされるため、高信頼性の要求が高まっています。特にエンジン周りでは高い温度、湿気、激しい振動、ほこり、その他の化学物質などにさらされる中で、長時間機能を果たさなければなりません。したがって抵抗器は、耐熱性、耐湿性、耐硫化性に優れ、さらに、繰り返しの熱ストレスや強い振動にも耐えられる基板への強い接合信頼性を確保した抵抗器が求められています。

 

また、電流検出やセンサなどでの増幅回路では2つの抵抗器の抵抗比で増幅率を決定するため、抵抗比が変動しないことが重要です。このような回路では高精度で長期信頼性に優れた薄膜チップ抵抗器RN73H, RN73Rを用いることにより長期間安定した特性を維持することが可能となります。また、耐電蝕性の要求により厚膜タイプの高信頼性抵抗器RS73を開発しました。長期安定性は金属皮膜よりもやや劣りますが、従来の厚膜タイプよりも大幅に向上させています。

高電圧耐性

複合機やX線解析装置などの電源は何れも高電圧を使用しており、駆動回路に使用される電子部品は最高使用電圧の高いものが要求されています。 また、電気自動車やハイブリッド車などの電源回路でも高電圧を使用するため、抵抗器の最高使用電圧も高電圧対応が要求されています。これらの回路に対応した抵抗器として高耐圧抵抗器HV73, HV73V, RCR, Pシリーズなどがあります。

また、高電圧を測定する場合、複数の抵抗器を用いて分圧して測定しますが、その抵抗器を1パッケージ化した高電圧分圧器HVDを開発しました。この製品は抵抗比で調整されているため高精度に電圧を測定することが可能であり、抵抗温度係数が近いため温度変化が起きた場合でも分圧比の変動が小さいことが特長です。

端子の鉛フリー化

従来、電子回路基板は鉛と錫の合金である有鉛はんだが使用されてきましたが、鉛は人体に有害であり自然環境への悪影響もあり、はんだの鉛フリー化が普及してきました。また欧州ではRoHS指令によって2006年7月より鉛をはじめとする6種類の有害物質が使用禁止となり、日本、中国など欧州以外の国でも規制が強化されてきています。これらに対応するため弊社では抵抗器の端子の鉛フリー化をはじめとして、環境負荷物質の削減に努めています。

抵抗器の解決すべき課題

0201サイズチップ抵抗器の実装信頼性

非常に小さい部品を精度高く搭載するためには、基板設計、はんだペーストの高精度印刷技術や部品搭載技術だけでなく、部品の電極構造や形状バラツキが小さいことが要求されます。さらに、キャリアテープの精度も実装性に大きく影響します。

高電圧耐性・高信頼性

さらなる、高電圧対応・高信頼性を実現させるためには、抵抗体材料そのものも開発改良が必要となっています。

鉛フリー化

現在、抵抗器の鉛フリー化は抵抗器の電極めっきに限定されており、抵抗器の保護膜等には微量の鉛成分が含まれています。これは鉛を含まない保護膜等を用いた場合、長期的に抵抗値が変化するなど信頼性が著しく低下するためです。

しかしながら環境負荷低減の必要性から、今後は抵抗体皮膜や、保護膜、内部接合はんだ等の鉛フリー化が求められるとみられています。

技術展望

抵抗器の小型化は限界に近づいており、先にも述べたように今後はあらゆる機器でモジュール化が普及していくと思われます。モジュール化は信号品質を向上させ、高速伝送/高速処理が可能となります。

さらに2019年に登場した無線通信規格5Gにより高速通信が可能となることにより、従来は電気信号のみであった回路が、光信号との融合を果たし、光部品を含めたモジュールの開発が盛んになっています。

また、自動車分野においてはADAS(Advanced driver-assistance systems:先進運転支援システム)や自動運転車に向けたセンシングシステム、画像処理システムや制御システムが多く搭載されてきており、搭載スペースの確保の必要性からモジュール化が急速に進んでいます。

それに加えて、より高密度実装が要求されることにより、同じサイズでより電力アップの要望が増え、今まで比較的余裕を持ったディレーティングで使用されてきた抵抗器も、年々ディレーティングに余裕がない厳しい使われ方が増えています。

これに対応していくためには、抵抗器そのものの改良もさることながら、抵抗器の定格電力のあり方や実装方法、推奨パターン等を検討していかなければなりません。そのひとつの取組として、面実装タイプの負荷軽減曲線を、周囲温度から端子部温度へ変更する活動を進めています。

 

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