温度センサの基礎

様々なセンサ

人間の五感に相当するセンサを以下に示します。

器 官 知 覚 動 作 センサ
視覚 物を見る
光を感じる
赤外線センサ
焦電センサ
フォトダイオード
聴覚 音を聞く
振動を感じる
圧力センサ
マイクロフォン
ストレインゲージ
(歪センサ)
 
嗅覚 臭いをかぐ ガスセンサ・湿度センサ
味覚 味を感じる 味覚センサ
皮膚 触覚 温度を感じる
圧力を感じる
温度センサ・圧力センサ
湿度センサ・変位センサ

温度センサの種類

温度センサは下図のように分類され、輝度や色・赤外線強度などで温度を測定する「非接触式」のものと、熱起電力や電気抵抗・磁気の変化を利用する「接触式」があります。そのうち最も多く利用されているのが、電気信号に変換しやすい「電気式」の抵抗温度センサです。

抵抗温度センサにはPtなどを使用した測温抵抗体、リニア抵抗器、サーミスタなどの種類があり、以前はサーミスタが多く用いられてきましたが、近年、測温の精度、長期安定性、互換性などの要求からリニア抵抗器や白金測温抵抗体を採用するケースが多くなっています。

抵抗温度センサの温度特性

温度に対して抵抗値が変化するタイプの温度センサを大別すると、サーミスタ、リニア抵抗器及び白金測温抵抗体があります。それぞれの温度特性を下図に示します。

R-T近似式
理想の測温抵抗体: R=R(C+CT)
測温抵抗体: R ≈ R(1+Ct+C
NTC: R ≈ R0exp{B(1/t-1/t)}

温度センサの特徴

測温抵抗体(RTD)

測温抵抗体は温度上昇に対して抵抗値が直線的に増加する特性をもち、特に白金測温抵抗体は直線性や長期安定性に優れています。広い温度範囲にわたって使用可能で、抵抗値許容差もT.C.R許容差も高精度です。白金測温抵抗体Pt100(100Ω at 0℃)はJIS規格で標準的に使用されますが、このほかにも10Ω~1kΩの範囲でバリエーションがあります。

・測温抵抗体の抵抗値変化が温度に対してほぼ直線性
・白金、ニッケル、銅等の金属を使用
・白金は安定性や直線性に優れ、広い温度範囲をカバー

リニア抵抗器

リニア抵抗器は、温度上昇に対して抵抗値が直線的に増加する特性を持っていますが、白金測温抵抗体ほど高精度ではありません。従来からモーターの巻線の温度補償用に多く用いられ、近年では高周波回路やディスプレイの温度補償用にも使用されています。

・抵抗値が温度に対してほぼ直線的に増加する点を利用
・ニッケルやパラジウムの合金を使用
・様々な抵抗値、T.C.R.の選択が可能

サーミスタ(PTC/NTC)

サーミスタとは温度により抵抗値が変化する素子をいい、温度が上がると抵抗値が上昇するPTCタイプ(正特性)と、温度が上がると抵抗値が下がるNTCタイプ(負特性)があります。

PTCタイプは、ある一定の温度で急激に抵抗値が大きくなります。この特性を利用して、半導体の熱暴走時の過電流保護用に使用されます。

NTCタイプは、温度の上昇に対して指数関数的に抵抗値が減少する特性をもち、常温の抵抗値が高く、温度に対する抵抗値変化量が大きいことから、一般的には温度での回路保護に使用されます。スマートフォンの二次電池の保護回路などに使用されており、温度センサの中では使用数量が一番多くなっています。比較的に経時変化が大きいことから、長期信頼性が求められる機器では設計的な配慮が必要です。

通常サーミスタというとNTCタイプを指すため、以降はNTCサーミスタをサーミスタと称します。

<NTCサーミスタの温度特性>
t℃における抵抗値Rは近似的に下記で与えられます。
R=R0・exp{B(1/T-1/T0)}
R :温度T(K)における抵抗値 * T(K) = t(℃)+273.15
R0:温度T0(K)における抵抗値
B :B定数と呼ばれているもので単位は(K)
カタログでは25℃における抵抗値をR0として記載しています。

・半導体の抵抗温度特性を利用
・小型で高感度
・抵抗温度変化特性が非線形
・経時変化が大きい

使用温度範囲と精度

温度センサの種類により使用温度範囲と精度が異なります。

測温抵抗体とリニア抵抗器の比較

測温抵抗体

特徴
・直線性の精度が高い
例)Pt100における温度に対する許容差
・クラスA:±(0.15+0.002 |t| )℃
・クラスB:±(0.3+0.005 |t| )℃
・Pt100などは規格化により標準化
・抵抗値やT.C.R.の種類が少ない
・自己発熱が低い条件での使用が前提

Fig. Pt100 R-V Characteristic (Excerpted)

温度(℃)

0

-1

-2

-3

-4

-5

-6

-7

-8

-9

-50

82.04

81.67

81.31

80.94

80.58

80.22

 

 

 

 

-40

85.66

85.29

84.93

84.57

84.21

83.85

83.49

83.12

82.76

82.40

-30

89.26

88.90

88.54

88.18

87.82

87.46

87.10

86.74

86.38

86.02

-20

92.85

92.49

92.13

91.78

91.42

91.06

90.70

90.34

89.98

89.62

-10

96.43

96.07

95.72

95.36

95.00

94.64

94.29

93.93

93.57

93.21

0

100.00

99.64

99.29

98.93

98.57

98.22

97.86

97.50

97.15

96.79

リニア抵抗器

特徴
・直線性の精度が低い
・抵抗値の種類が多い
・T.C.R.の種類が多い
・定格電力が高い

e.g. T.C.R. (Linear resistors)

 

温度換算誤差

リニア抵抗器は25℃を基準として、Cold T.C.R.とHot T.C.R.で温度特性が異なるため、誤差要因となります。
白金測温抵抗体は使用温度範囲においてT.C.R.が安定しています。

温度特性のバラツキ

NTC

NTC

まとめ

それぞれの温度センサには様々な特徴があります。温度による制御、温度測定にはそれぞれの特徴を把握して使い分けが必要です。

 

測温抵抗体

リニア抵抗器

NTCサーミスタ

Pt(白金)

その他金属

測定精度

×

安定性

分解能
(
抵抗値変化/℃)

測定温度範囲

測温補正回路

不要

不要

必要

互換性

選択性
(
抵抗値 & T.C.R.)

×

アプリケーション

温度測定

温度測定

温度補償

回路保護

温度センサについて以下の事項を記載したセミナー資料「温度センサ(測温抵抗体)の基礎とアプリケーション」を希望される方は、 ≪問い合わせ≫より「温度センサ・サーミスタ」を選択いただき、問い合わせ内容に「温度センサセミナー資料希望」と記入して送信してください(同業者様の請求はご遠慮ください)。

温度センサ(測温抵抗体)の基礎とアプリケーション

第1章 温度センサとは

第2章 白金測温抵抗体の活用方法

白金測温抵抗体を活用するには

温度許容差と補正/JIS vs. IEC/結線方式/自己発熱/熱時定数/熱放散定数

白金測温抵抗体の種類

第3章 温度センサのアプリケーション

なぜ、温度センサを使用するのか?

目的に応じた温度センサ

温度測定の事例

温度補償の事例

温度センサの実用例

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