製品情報

電流検出

電流検出の原理

抵抗器に電流を流すとオームの法則により抵抗器の両端には電圧降下が発生します。この電圧値を抵抗値で割れば、その抵抗器に流れる電流値を知ることができます。大きな電圧降下を得るために抵抗値を大きくすると、抵抗器の過大な発熱が問題となります。そのため、できる限り小さな抵抗値を使用して検出しますが、電圧降下が小さい場合には、増幅回路で検出電圧を増幅する必要があります。

電流検出用抵抗器の用途

電気回路において電流を検出する用途は、次の3つに分けることができます。

過電流検出

回路の故障や過負荷状態などによって通常よりも過大な電流が流れた場合に、安全のために回路動作を止める必要があります。設定値以上の電流が流れた場合に異常と判断し出力を遮断します。

電流制御

DC-DCコンバーターなどでリアクトルを流れる鋸歯状波電流のピークなどを検出し、制御に使用します。
また、三相モーターを回転させるためには、電流の位相や時間などを正しく制御する必要があります。そのため、各相に流れている電流を検出して制御回路へフィードバックしています。EPS(電動パワーステアリング)やエアコンなどで多用されます。

電流管理(バッテリーマネージメント)

二次電池で動作する機器は、残量の把握や長時間使用が可能となるよう、電池に流れる電流や電圧を検出し最適な回路動作の制御を行なっています。


目的 動作例 使用例

過電流検出

回路の故障などにより過大な電流が流れた場合、安全のために回路動作を停める

  • 電源回路の過電流保護
  • 二次電池の過放電/過充電保護
  • モーターの過電流保護

電流制御

回路に流す電流値、時間、位相などを制御するために、電流を検出して制御回路にフィードバックする

  • DC-DCコンバーター
  • インバーター電源
  • 交流モーターの電流制御
電流管理 二次電池の充放電電流をリアルタイムに検出することにより、二次電池の残量把握や電源回路の最適動作を行う。
  • ノートPCや携帯電話などの
    二次電池駆動機器の電流管理
  • EV・HEVの二次電池の電流管理

電流検出用抵抗器の種類

一般的には電流が流れたときの電圧降下が数10mV~数100mVになるような抵抗値を使用します。したがって、電流検出用低抵抗器は数Ω以下の低い抵抗値が使用されます。検出したい電流値によって使用する抵抗器の種類も決まってきます。
数10Aのような大電流を検出するには、数mΩの非常に低い抵抗値が必要になるので、低い抵抗値が得意な金属板タイプや金属箔タイプが用いられます。
また、小さな電流を検出する場合は、数100mΩ~数Ωの比較的大きな抵抗値が使用されるので厚膜タイプが適しています。

電流検出用低抵抗器のラインアップはこちら

過電流検出の用途では、リード付き金属皮膜タイプMFMOSXの抵抗器も使用されます。

大電流を検出する場合の注意事項

大電流を検出する場合、抵抗器による損失を小さくするため電流検出用抵抗器は数mΩの非常に小さな抵抗値を使用しますが、正確に電流を検出するには以下の事項について注意が必要です。

  • 電圧端子の引き出し方
  • 低抵抗器のインダクタンス(電流値の時間的な変動di/dtが大きい場合)

電圧端子の引き出し方

抵抗器に電流を流したときの電圧降下を検出するために、抵抗器の両端から電圧端子を引き出す必要があります。
電圧端子の引き出しパターンは、下図(2)の様に抵抗器の電極パッドの内側中心部から引き出すことを推奨します。回路基板の銅箔パターンも小さな抵抗値を持つため、その銅箔パターンの抵抗値による電圧降下の影響を受けないようにする必要があるからです。
下図(1)の様に電極パッドの横から電圧端子を引き出すと、低抵抗器の抵抗値と銅箔パターンの抵抗値とを加えた電圧降下を検出することになり、正確な電流検出ができなくなります。

低抵抗値におけるインダクタンスの影響

抵抗値が小さい場合には抵抗器は寄生インダクタンスの影響を受け、周波数が高くなるほどインピーダンスが増加します。直流電流の場合には影響はありませんが、高い周波数成分を含む鋸歯状波のような交流電流の場合には正確な検出ができなくなります。
下図のように交流電流が流れた場合の抵抗器の電圧降下は、抵抗値による電圧降下の値とインダクタンス値による電圧降下の値の合計になります。よって、大電流の検出にはできる限りインダクタンス値の小さな低抵抗器を使用する必要があります。

4端子タイプの電流検出用抵抗器

電流検出用低抵抗器には、電圧を検出するための電圧端子と電流を流すための電流端子を持つ、4端子タイプのものがあります。下図に4端子タイプの電流検出用低抵抗器の例を示します。
4端子の利点は、電圧端子を持っているのでパターン引き出し方による検出値の誤差が少なくなり、より正確な電流検出が可能なことです。2端子であっても適切に電圧端子を引き出せば正確に電流を検出することが可能です。
4端子の欠点としては、電流を検出するための抵抗の他に、構造上電圧端子と電流端子の間にも抵抗ができてしまうので、2端子タイプに比べて全体の抵抗値が大きくなります。そのため2端子タイプに比べると、同じ電流を流した場合の消費電力が大きくなり、抵抗器の発熱も大きくなります。 大電流を検出する数mΩの抵抗値の場合には、この電圧端子と電流端子間の抵抗の影響が大きくなるので、無駄な電力を消費させる割合が大きくなります。また、構造上寄生インダクタンスが大きくなりますので、電流変化(di/dt)が大きな電流の検出には向きません。

 

過電流検出(例)

スイッチング用トランジスタの過電流を検出するためにトランジスタのソース(またはエミッタ)に電流検出用の低抵抗器を使用する場合があります。この抵抗器は、トランジスタが故障して短絡し大電流が流れたとしても発煙・発火しない事が必要です。また、インダクタンス成分が小さいことも要求されます。このような用途には金属タイプの低抵抗器 BPR, SL, TSL, LRをおすすめします。

電流検出用抵抗器・パワーシャントの
ラインアップはこちら

製品のお問い合わせはこちら

お客様の課題に合わせてご提案します。お気軽にご相談ください。