日本の製造業は、かつては大量生産・大量消費という時代に支えられて、順調な成長を続けてきました。しかし1980年代以降、特に85年のプラザ合意以降は、急激な円高、開発途上国の市場参入による市況の変化や価格競争の激化といったさまざまな要因によって、経営環境は激しく移り変わっていきました。エレクトロニクスパーツメーカーであるKOAもその例外ではありません。また、お客様の声が個性化・多様化し、商品のライフサイクルが短くなっていくことに伴い、大量生産を支えてきた高額な設備投資は収益を圧迫し、倉庫には大量の在庫品が眠るようになりました。市場は多品種少量生産体制へ移行し、お客様より「必要なもの」を「必要な時」に「必要なだけ」生産・調達するジャストインタイムでの供給が求められてきたのです。
このような経営環境の変化に的確に対応していくために、1987年4月からものづくりの現場改善であるKPS(KOA Production System)がスタートし、2年後にはものづくりの現場だけでなく、全社の経営改善活動――KPS(KOA Profit System)へと進化し新たなスタートを切りました。現在は、KOAグループの経営改善活動に共通する思想・行動規範として位置付けられています。
そのKPS活動における"ものづくり"にスポットをあててみます。
KPS活動のスタートにあたって、まずは社内にKPS推進本部を発足し、社員の意識改革や志気向上を目的に徹底したモラール訓練を始めました。また外部からの改善指導や実践研修などの協力を得て、製造部門・物流部門・間接業務部門におけるあらゆる場面での改善を推進。すべてのシステム、モノや情報の流れの中で徹底したムダの発見と廃除に全力を尽くしました。
その結果、KPS活動の第1ステージである1987~97年の10年間において、棚卸資産(製品・半製品・原材料)を1/6まで減少、また生産リードタイム(製造指示から製品を納入するまでの時間)は1/8までに短縮、さらに設備回転率を3倍に向上するという当初の目標を上回る成果をあげることができました。
このKPS活動により、KOAは利益を創出する企業体質へと生まれ変わっていきました。
KPS活動の推進とともに、KOAの生産システムは変革を遂げていきましたが、その中で大きな改革となったのが、1993年から導入した「ワークショップ体制」への移行です。
これは従来の分業方式を否定し、受注~材料調達~生産~出荷までのプロセスを20人程度の小さな組織で一貫してものづくりを行うという方式で、自己完結型の組織です。ワークショップでは、多能工(自分の担当する工程だけでなく前後の工程をもこなせる能力を身につけた人)で、後工程はお客様という感度を持った人材の育成を進めています。
つまり小規模の経営組織をつくり、お客様の顔が見える"ものづくり"をすることによりお客様との信頼関係の構築を目指していくというものです。それが、真のものづくりの喜びに繋がることを感じて欲しい、という思いが込められているのです。
KPS活動は、人間性を大切にし、資源をムダ遣いせず、自然環境に配慮したKOAの理想とするものづくりを目指しながら、あらゆるお客様の声にお応えする為に全社の改善活動を展開し、次なる進化へ向けてチャレンジを続けています。